02/25 aiueo 01/01 かがみ 01/01 ゼルプスト殿下 01/01 かがみ 01/01 ゼルプスト殿下 05/10 かがみ
今日はモカちゃんのピアノの発表会でした。ショパンの幻想即興曲。ちょっと 苦しかったかな。ところでモカちゃんはドラムも習っているのですが、こちら はほんと上手。アンサンブルで一人目立っていました。親ばかの子供自慢でし た。はい。
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一年ちょっと前にはやしさんに教えて頂き Shoenfield著 Mathematical Logic を購入 しましたが、全然読まずに無駄な時間を過ごしてしまいました。ところがちょっ と事情があり、論理学の基本的な部分を勉強する機会を頂いたのと、Fuさんの 記事を読んでると計算理論関連の話題もなかなか面白そう。こちらも基本的な 部分は知っておくと将来楽しめそう。
などなどいくつかの理由があり、一度真面目に読んでみようかと考えています。 集合論の方は記述が割と代数的 (だと思う) である Jech 本が読みやすいので すが、なにせ持ち歩くには重過ぎ。そもそも五十肩になったのは Jech 本の影 響もあるのではと疑っています。最近右肩も調子悪いし (涙)。というわけで しばらくは Shoenfiled 本を持ち歩こうかなと考えています。こんどは挫折し ないように。集合論と両立できるのかが最大の難問です。
コメント_てなさく [Shoenfieldの Mathematical Logic は大学院で最初に読...]
_Fu [Shoenfield の Mathematical Logic は実は読んだこと...]
_かがみ [(てなさくさん) やはり再帰理論を学ぶのに良い本なのですか。これは頑張って読破せ...]
_はやし [ぼくのShoenfield本、日本に一時帰国するときにこちらアメリカの荷物保管所...]
_かがみ [はやしさんこんにちは。本来一年前から読んでおくべき本だったと思うのですが、当時は...]
昨日暫定的に書きましたが、今週もずっとつくば出張です。朝昼とごはんを食 べるひまがなかったのですが、夜は「爆弾ハンバーグセット 270グラム」を食 べました。お腹いっぱいです。とは言うものの、ホテル住まいですと、夜中急 にお腹がすいた時なんにも食べものがなかったらどうしよう、という恐怖感が 大きく、コンビニでそれなり買い込んでからホテルに入るのです。こういう生 活が長く続くと肥満モード一直線です。気をつけなければ。
来週からは会社での正常な勤務にもどる予定。予定。はず (笑)。
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どうでも良い話なのですが、小学校の算数で、「30円のりんごを 4つ買いまし た。いくらでしょうか。」という問題で 30x4 と式をたてると正解だが、4x30 とするとばつになる場合があるそうな。
自然数の乗法では可換法則が成立するので、とりたてて目くじらを立てるほど のものではないと思っていましたが、もしかして小学校の算数では、少なくと も乗法を考える場合、自然数を基数ではなく順序数と考えているのかも。
そう考えればばつになる理由も分からないでもないし、そもそも順序数のかけ 算は存外分かりにくく、 $ \alpha \beta $ を考えるとき、確かに私は $ \alpha $ が $ \beta $ 個並んだ図を考える。
(おまけ) 記憶が定かではないのですが、たしか台形の面積を求めるときに ((上辺+下辺)x高さ÷2) ではなく (高さx(上辺+下辺)÷2) とかするとばつと いうこともあったかも。もしそうだとするとこれはやりすぎだと思う。この場 合には自然数の理論ではなく量、すなわち実数の理論を考えているわけであり、 量と両立する自然な整列順序は存在しないから。
コメント_通りすがり [>自然数の乗法では可換法則が成立するでも小学校では証明はしてないんだよね(w証明...]
_ni-capo [「算数の問題の解き方〜答え」が、変な言い方ですが、マニュアル化されている、そんな...]
_Red cat [でも、例題の場合、30 も 4 も量を表しているはずだから、順序数とみなすのはお...]
_かがみ [(通りすがりさん) 確かに小学校では証明してませんねえ。というか小学校で証明が行...]
_タナカコウイチロウ [こんばんは。おそーい反応ですが。”αがβ個並んでいる”。この、順序数の乗法につい...]
_かがみ [順序数のかけ算って意外と分かりにくく、勉強始めの頃αβとβαの違い、例えば2ωと...]
明日からまた忙しくなりそうなので、切りの良いところまで。
ここで整順な remarkable E.M.集合 $ \Sigma $ 、すなわち $ 0^{\sharp} $ について整理します。まず整順性ですが、この条件がないと非可算極限順序数 $ \alpha $ に対する $ (\Sigma,\alpha) $ モデル (これは定義によりある $ L_\gamma $ と初等的同値であった) の推移的崩壊を考えることができず、非常に不便な思いを することになります。推移的崩壊を考えることができれば、圧縮レンマも適用可能で モデルを $ L $ の階層で考えることが可能となります。
Remarkability ですが色々な非可算極限順序数 (特に非可算基数) $ \lambda $ に対する $ (\Sigma,\lambda) $ モデルの初等的部分モデルを考察する場合における「ある種の正則性」を保証します。 即ち次の事実が成り立ちます。
(命題) $ \lambda $ を非可算極限順序数とする。整順で remarkable な E.M.集合を $ \Sigma $ として $ (\mathcal{A},I) $ を $ (\Sigma, \lambda) $ モデルとする。そして $ I=\{i_\xi\,:\,\xi\lt\lambda\} $ を $ I $ の要素の昇順の列挙とする。極限順序数 $ \gamma\lt\lambda $ に対し $ J=\{i_\xi\,:\,\xi\lt\gamma\} $ とすると $ (H^{\mathcal{A}}(J), J) $ は $ (\Sigma,\gamma) $ モデルとなり $ \mathrm{Ord}(H^{\mathcal{A}}(J))=\{\alpha : \alpha \lt i_\gamma\}. $
本当は $ \mathcal{A}=(A,E), \lambda\subset{A} $ 等きちんと構造も明記する必要があるのですが、その辺りは文脈依存ということで。
(証明)
今までの記述と重複がありますが復習を兼ねて。まずスコーレム閉包の性質により $ H^{\mathcal{A}}(J) \prec \mathcal{A} $ が成立する。従って $ H^{\mathcal{A}}(J) $ はある $ \alpha $ に対する $ L_\alpha $ と初等的同値で、さらに $ J $ は $ H^{\mathcal{A}}(J) $ での識別不可能集合となるとともに $ \Sigma=\Sigma(H^{\mathcal{A}}(J), J) $ であることも分かる。従って $ (H^{\mathcal{A}}(J), J) $ は $ (\Sigma,\gamma) $ モデルである。E.M.集合 $ \Sigma $ の remarkability は、極限順序数 $ \lambda $ に対する $ (\Sigma, \lambda) $ モデル $ (\mathcal{A},I) $ において $ I $ が $ \mathcal{A} $ 閉非有界であることを導きます。実際非有界は定義そのものであり、閉じて いることは任意の極限順序数 $ \gamma \lt \lambda $ に対し $ i_\gamma = \sup \{i_\xi\,:\, \xi \lt \gamma\} $ を示せば良いのですが、これは容易に分かります。
Remarkability が効くのは $ \mathrm{Ord}(H^{\mathcal{A}}(J)) $ が $ \mathrm{Ord}(\mathcal{A}) $ の始片として得られる部分。実際 remarkability により $ \alpha \lt i_\gamma $ は $ J $ の要素のスコーレム項で表すことができる (証明終)。
$ \Sigma $ を整順で remarkable な E.M.集合とするとき非可算基数 $ \lambda $ に対して推移的な $ (\Sigma, \lambda) $ モデルは一意に定まります。
(定理 1) $ \Sigma $ を整順で remarkable な E.M.集合とする。 $ \lambda $ を非可算基数とするとき推移的な $ (\Sigma,\lambda) $ モデルは $ (L_\lambda, I) $ (うるさく言えば $ ((L_\lambda,\in), I) $ ) である。さらに $ I $ も一意に定まる。
(証明) 推移的な $ (\Sigma,\lambda) $ モデルが非可算極限順序数 $ \gamma $ に対する $ (L_\gamma,I), |I\vDash\lambda $ の形をしていることは明らかである。 $ \gamma = \lambda $ であることを証明する。 $ \lambda \le \gamma $ であることは明白なので $ \lambda \lt \gamma $ を仮定して矛盾を導く。 $I$ は \(\gamma\) で非有界なので $\beta \lt \lambda \lt i_{\beta}$ を満たす極限順序数 $\beta$ が存在する。するといつものように $J= \{i_\xi : \xi \lt \beta \}$ とすると $(H^{L_\gamma}(J), J)$ は $ (\Sigma, \beta) $ モデルとなり remarkability により $ \lambda \subset H^{L_\gamma}(J) $ である。従って $ \lambda \le |\beta| $ となるがこれは矛盾である。 $ I $ の一意性についてであるが $ (L_\lambda,K) $ が $ (\Sigma,\lambda) $ モデルであるとすると、 $ I $ から $ K $ への順序同型が存在し $ L_\lambda $ の同型に拡張されるが、この拡張が恒等写像になることにより導かれる (証明終)。
(定義) $ \Sigma $ を整順で remarkable な E.M.集合とする。 $ \lambda $ を非可算基数とするとき、一意に定まる推移的な $ (\Sigma,\lambda) $ モデルを $ (L_\lambda, I_\lambda) $ と書く。
(定理 2) $ \kappa \lt \lambda $ を非可算基数とするとき次が成立する。
(1.1) $ I_\kappa = I_\lambda \cap \kappa $(証明)
(1.2) $ L_\kappa = H^{L_\lambda}(I_\kappa) $
$ J=\{i_\xi\,:\,\xi \lt \kappa\} $ とすると $ (H^{L_\lambda}(J),J) $ は $ (\Sigma,\kappa) $ モデルとなる。従って $ (L_\kappa,I_\kappa) $ と同型である。ところが remarkability により $ H^{L_\lambda}(J) $ の順序数全体は $ \lambda $ の始片となるので $ J=I_\kappa $ が成立し $ H^{L_\lambda}(J) $ は推移的で $ L_\kappa $ に等しくさらに $ I_\kappa = I_\lambda \cap \kappa $ が成り立つ (証明終)。整順で remarkable な E.M.集合 (すなわち $ 0^{\sharp} $ ) の非可算基数に対する推移的なモデルに対する美 しい階層構造が得られました。
「0# (zero-sharp) 一回目」 に記載した Silver indiscernible との関連について述べることが可能となりました。
(定理 3) $ 0^{\sharp} $ が存在することは次の条件と同値である。
( $ V $ での) 非可算基数 $ \kappa \lt \lambda $ に対して(証明)$ (1a)\,(L_\kappa,\in) \prec (L_\lambda, \in) $
$ (1b) $ すべての ( $ V $ での) 非可算基数を含む Ord の閉非有界なクラス $ I $ がただ一つ存在し、非可算基数 $ \kappa $ に対し次の条件を満たす。
$ (1b.1) \, |I\cap \kappa| = \kappa $
$ (1b.2) \, I\cap\kappa $ は $ (L\kappa, \in) $ での識別不可能集合
$ (1b.3)\, L_\kappa $ の任意の要素は $ L_\kappa $ 上 $ I\cap\kappa $で定義可能の要素で定義可能。
0# (zero-sharp) 四回目 の証明により、ある非可算基数 $ \lambda $ に対する $ L_\lambda $ に非可算個の要素を含む識別不可能集合が存在すれば $ 0^{\sharp} $ が存在することは分かっているので、(1b) から $ 0^{\sharp} $ の存在が導かれます。逆に $ 0^{\sharp} $ が存在する場合 (定理 2) の証明により (1.a) は明らかです。さらに $ I=\bigcup \{I_\lambda\,:\, \lambda \text{ is an uncountable cardinal}\} $ とすれば (1.b1) (1.b2) も明らかに成り立ちます。また (1b.3) は スコーレム項が $ L $ の整列順序により定義可能であることにより成立します。自明でない部分は $ I $ が任意の非可算基数を要素とすることですが、 $ \kappa \lt \lambda $ を非可算基数としたとき $ I_\kappa = I_\lambda \cap \kappa $ であり $ I_\lambda $ が $ L_\lambda $ で閉じていることと $ I_\kappa $ が $ \kappa $ で非有界であることにより $ \kappa \in I_\lambda. $ (証明終)(系) $ 0^{\sharp} $ は一意に定まる。
(証明) 実際 $ 0^{\sharp} = \{\varphi(v_1,\cdots,v_m)\,:\, L_{\aleph_\omega}\vDash \varphi(\aleph_1,\cdots,\aleph_m)\}. $
「0# (zero-sharp) 一回目」 で $ \aleph_1 $ に関して述べたように $ 0^{\sharp} $ が存在すれば任意の (本当の) 非可算基数は $ L $ で到達不可能であることも分かります。特に $ 0^{\sharp} $ が存在すれば $ V \neq L $ です。
書いているときは見てないとはいえJech本のほとんど丸写しで申しわけなかっ たのですが、 $ 0^{\sharp} $ のごくごく基本的な部分までたどりつけたかも知れません。分かりにくいところ に少し説明を捕捉した部分もあるのでご容赦の程を。次回以降はもう少し $ 0^{\sharp} $ に関する基本的事項をまとめたいのと、 Kunen による $ 0^{\sharp} $ が存在することと初等的埋め込み $ j:L \rightarrow L $ の存在の同値性について言及したいのですが、少々時間がかかるかも知れません。
(参考文献)
Thomas J. Jech 著
Set Theory
Keith J. Devlin, Constructibility
(関連リンク)
0# (zero-sharp) 一回目
0# (zero-sharp) 二回目
0# (zero-sharp) 三回目
0# (zero-sharp) 四回目
0# (zero-sharp) 六回目
Kunenの定理 (準備編)
0# (zero-sharp) 七回目
Kunenの定理 (証明編)
コメント_てなさく [(1b.3) の 「 I\\cap \\kappa で定義可能 」 という部分は...]
_かがみ [あっ、たしかに本文の記述ですとまずいです。まるで 0^# が L の要素のような...]
本日はラムゼイ基数の存在が $ 0^{\sharp} $ の存在を導くことの証明です。
(定義) 非可算基数 $ \kappa $ がラムゼイ基数であるとは次の条件を満たすこと。
$ k \rightarrow (k)^{\lt\omega}_{2} $ここで一般に $ \kappa \rightarrow (\mu)^{\lt\omega}_{\lambda} $ とは次を満たすことをです。
任意の関数 $ f:\,[k]^{\lt \omega} \rightarrow \lambda $ に対し $ H\subset {\kappa}, \, |H| = \mu $ であるものが存在し、おのおの $ n\in \omega $ に対し $ |f([H]^n)\vDash1. $ $ f([H]^n) $ が $ n $ ごとに変化するのは許します。明らかにラムゼイ基数は弱コンパクト基数です。従ってラムゼイ基数は到達不 可能です。また可測基数の下に弱コンパクト基数が「その可測基数個」存在する ことの証明と同様の論法 (もしくは可測基数が $ \mathrm{\Pi}^{1}_{2} $ 記述不可能であることと、実際ラムゼイ基数の定義が $ \mathrm{\Pi}^{1}_{2} $ であることからも導かれます) により、可測基数の下に「その可測基数個」のラムゼイ基数が存在することが分 かります。
(命題) $ \kappa $ をラムゼイ基数とし $ \lambda \lt \kappa $ とする。このとき $ \kappa \rightarrow (\kappa)^{\lt \omega}_{\lambda} $ が成り立つ。
(証明)
$ f:[\kappa]^{\lt \omega} \rightarrow \lambda $ とする。 $ g:[\kappa]^{ \lt \omega} \rightarrow 2 $ を次のように定義する。(命題) $ \kappa $ をラムゼイ基数とする。 $ \mathcal{L} $ を可算言語とし、 $ \mathcal{A}=(A,...) $ を $ \kappa \subset A $ である構造とする。このとき $ I\subset{\kappa}, \, |I\vDash\kappa $ を満たす $ \mathcal{A} $ での識別不可能集合が存在する。$ \alpha_1 \lt \cdots \lt \alpha_m \lt \alpha_{m+1} \lt \cdots \lt \alpha_{2m} $ を $ \kappa $ の要素とし $ f(\alpha_1,\cdots,\alpha_m) = f(\alpha_{m+1},\cdots,\alpha_{2m}) $ のとき $ g(\alpha_1,\cdots,\alpha_m,\alpha_{m+1},\cdots,\alpha_{2m})=1. $ その他の場合 $ g $ は $ 0. $
$ g $ に対する等質な集合 $ H\subset{\kappa}, |H\vDash\kappa $ をとる。 $ f $ は高々 $ \lambda\lt\kappa $ 個の異なる値しかとれないので $ n $ が偶数の時 $ g $ は $ [H]^n $ 上 つねに $ 1 $ である。従って $ H $ が $ f $ に対しても等質となることは容易に分かる (証明終)。
(証明)
上の命題により $ \kappa \rightarrow (\kappa)^{\lt\omega}_{2^\omega} $ が成立する。 $ [\kappa]^{\lt\omega} $ からの関数 $ f $ を次のように定義する。(系) $ \kappa $ をラムゼイ基数とするとき、 $ (L_\kappa,\in) $ での識別不可能集合 $ I\subset \kappa $ で $ I=|\kappa| $ を満たすものが存在する。$ f(\alpha_1,\cdots,\alpha_n) = \{\varphi(v_1,\cdots,v_n)\in\mathcal{L} \,: \, \mathcal{A}\vDash \varphi(\alpha_1,\cdots,\alpha_n)\} $
$ \mathcal{L} $ は可算言語だったので $ f $ の値域は $ 2^\omega $ の部分集合と同一視できる。 $ f $ に関する等質集合 $ I\subset{\kappa} $ で $ |I\vDash\kappa $ を満たすものが求める識別不可能集合となる (証明終)。
(定理) ラムゼイ基数が存在すれば (もっと弱い条件で $ \kappa \rightarrow (\omega_1)^{\lt\omega}_{2} $ を満たす基数 $ \kappa $ が存在すれば) $ 0^{\sharp} $ が存在する。
上の (系)での記号で $ \Sigma=\Sigma(L_\kappa,I) $ とすると、E.M.集合 $ \Sigma $ は整順性と非有界性らしきものを満たします。しかしながら remarkablity を 満たすとは限らないし、そもそも $ H^{L_\kappa}(I)=L_\kappa $ が成立するかどうかも分からないので $ (L_\kappa,I) $ が $ (\Sigma,\kappa) $ モデルになっているかどうかさえ分かりません。なので Jech 本そのままなの ですが、次の補題を経由します。
(補題) $ \kappa $ を非可算基数として、極限順序数 $ \lambda \ge \kappa $ と構造 $ (L_\lambda, \in) $ に関する順序型 $ \kappa $ の識別不可能集合 $ J\subset {\lambda} $ が存在したと仮定する。このとき極限順序数 $ \gamma $ と順序型が $ \kappa $ である $ (L_\gamma,\in) $ での識別不可能集合 $ I\subset {\gamma} $ が存在する。 $ I $ は $ H^{L_\gamma}(I)=L_\gamma $ を満たし、さらに $ \Sigma=\Sigma(L_\gamma,I) $ は remarkable である。従って $ 0^{\sharp} $ が存在する。
補題の結果とラムゼイ基数に関する上の命題群の証明を吟味すると、 $ 0^{\sharp} $ の存在のためには $ \kappa \rightarrow (\omega_1)^{\lt\omega}_{2} $ が成り立てば十分であることが分かります。この補題の証明はややテクニカルです。
(補題の証明 Jech. Set theory. 320ページより. 間違いは私の責任ということで)
極限順序数 $ \lambda $ として 「構造 $ (L_\lambda,\in) $ に関する順序型が $ \kappa $ である識別不可能集合が存在する」もので最小のものとする。 $ J \subset \lambda $ を順序型が $ \kappa $ である識別不可能集合とする。ここでいつもの通り $ \mathcal{A}= (H^{L_\lambda}(J), \in) $ とすると $ \mathcal{A} \prec (L_\lambda,\in) $ である。従って $ \mathcal{A} $ の推移的崩壊を考えることができ、ゲーデルの圧縮レンマにより $ \pi:\, H^{L_\lambda}(J) \rightarrow L_\gamma $ の形に書ける。ここで $ \gamma\le\lambda $ は極限順序数である。 $ I=\pi(J) $ とすると明らかに $ I $ の順序型は $ \kappa $ でありさらに $ H^{L_\gamma}(I)=L_\gamma $ が成立し、また $ \lambda $ の最小性により $ \gamma=\lambda $ が成り立つ。 $ \Sigma=\Sigma(L_\lambda,I) $ が求める remarkable な E.M. 集合であることを示す。下の記事で「基本的なところ全部」と書きましたがラムゼイ基数との関連で 力つきました。Remarkability のご利益や 「 0# (zero-sharp) 一回目 」の結果等 $ L $ に関する超越性の美しい部分は次回ということで。(非有界であること) $ I $ が $ \lambda $ で有界であったと仮定する。すると極限順序数 $ \alpha\lt\lambda $ で $ I\subset\alpha $ であるものが存在する。スコーレム項 $ t $ と $ I $ の要素の上昇列 $ \beta_1\lt\cdots\lt\beta_m $ により $ \alpha = t^{L_\lambda}(\beta_1,\cdots,\beta_m) $ と表し $ K=\{\xi\in I : \beta_m\lt\xi \} $ とする。このとき $ K $ の順序型が $ \kappa $ であることは明らかである。もし $ K $ が $ (L_\alpha,\in) $ に関する記述不可能集合であれば $ \lambda $ の最小性に反することになる。今 $ \varphi(v_1,\cdots,v_n) $ を集合論の言語に属する論理式として、 $ k_1\lt\cdots\lt k_n $ を $ K $ の要素の増大列とする。すると充足関係が極限順序数 $ L_\alpha $ に関して一様に $ \Delta_1 $ 定義可能であることにより
$ (L_\alpha \vDash \varphi(k_1,\cdots,k_n)) \leftrightarrow (L_\lambda \vDash (L_\alpha \vDash \varphi(k_1,\cdots,k_n))) $が成り立つ。従って $ \alpha = t^{L_\lambda}(\beta_1,\cdots,\beta_m) $ であったことを思い出すと、論理式 $ \psi(v_1,\cdots,v_m,v_{m+1},\cdots,v_{m+n}) $ が存在し$ (L_\alpha \vDash \varphi(k_1,\cdots,k_n)) \leftrightarrow (L_\lambda \vDash \psi(\beta_1,\cdots,\beta_m,k_1,\cdots,k_n)) $が成立する。 $ I $ は $ (L_\lambda,\in) $ に関する識別不可能集合であったので、この事実は $ L_\alpha $ での $ \varphi(v_1,\cdots,v_n) $ の真偽が $ K $ の昇順要素の代入により変化しないことを意味する。従って $ K $ は $ (L_\alpha,\in) $ に関する識別不可能集合である。(Remarkability) $ (L_\lambda,\in) $ に関する識別不可能集合 $ I $ を $ \Sigma=\Sigma(L_\lambda,I) $ を満たし順序型が $ \kappa $ 、 $ H^{L_\lambda}(I)=L_{\lambda} $ でありさらに非有界なもので $ i_\omega $ が最小となるものとする。今までの議論によりこれらの条件を満たす $ I $ は存在する。 $ \Sigma=\Sigma(L_\lambda, I) $ が remarkable でないと仮定する。するとスコーレム項 $ t $ と $ I $ の要素の増大列 $ \alpha_1\lt \cdots\lt \alpha_m\lt \beta_1\lt \cdots\lt \beta_n\lt \gamma_1\lt \cdots\lt \gamma_n $ が存在し次の条件を満たす。
(1.1) $ t^{L_\lambda}(\alpha_1,\cdots,\alpha_m,\beta_1,\cdots,\beta_n) $ は順序数ここで $ I $ の要素からなる $ n $ 元集合の列 $ (u_\xi)_{\xi\lt \kappa} $ を次のように定義する。
(1.2) $ t^{L_\lambda}(\alpha_1,\cdots,\alpha_m,\beta_1,\cdots,\beta_n)\lt \beta_1 $
(1.3) $ t^{L_\lambda}(\alpha_1,\cdots,\alpha_m,\beta_1,\cdots,\beta_n) \neq t^{L_\lambda}(\alpha_1,\cdots,\alpha_m,\gamma_1,\cdots,\gamma_n) $(2.1) $ \alpha_m = i_{\xi} $ のとき $ u_0 = \{i_{\xi+1},\cdots,i_{\xi+n}\}. $ 即ち $ I $ で $ \alpha_m $ の次の $ n $ 個の要素からなる集合要は $ I $ の $ \alpha_m $ より大きい要素を順番に $ n $ 個ずつ集めるわけです。考えてみると (2.2) は必要ないです。(2.3) で 極限順序数の仮定をとれば良い。そして $ w_\xi = t^{L_\lambda}(\alpha_1,\cdots,\alpha_m,u_\xi) $ とする。ここで最後の $ u_\xi $ の部分は $ u_\xi $ の $ n $ 個の要素を昇順に並べたものとする。(1.1) (1.3) により $ \xi \lt \eta $ に対し $ w_\xi,w_\eta $ は順序数であり (識別不可能性による)、 $ w_\xi \lt w_\eta $ または $ w_\xi \gt w_\eta $ が成り立つが、もし $ w_\xi\gt w_\eta $ であれば再び識別不可能性により、任意の $ \xi \lt \eta $ に対し $ w_\xi\gt w_\eta $ が成立し順序数の無限降下列となる。従って $ \xi \lt \eta \rightarrow w_\xi\lt w_\eta. $ ところが $ J=\{w_\xi \,:\, \xi\lt \kappa\} $ とすると $ J $ は $ (L_\lambda,\in) $ での識別不可能集合となることが証明できる。さらに $ i_\omega $ が $ u_\omega $ の最初の要素であることと (1.2) により $ w_\omega \lt i_\omega $ である。そしてこの補題の証明の最初の部分と同様に $ H^{L_\lambda}(J) $ を考えると、その推移的崩壊は $ \pi:\,H^{L_\lambda}(J) \rightarrow L_\lambda $ となり $ \pi(J) $ は $ I $ が満たすべき条件をすべて満足するが、これは $ i_\omega $ の最小性に反する。
(2.2) $ u_{\xi+1} $ は $ I $ で $ u_{\xi} $ の最大要素の次の $ n $ 個からなる集合
(2.3) $ \xi $ が極限順序数のとき $ u_\xi $ は $ I - \bigcup_{\eta\lt \xi} u_\eta $ の 最小元から順番に $ n $ 個とったもの。ただし $ u_0 $ の最小要素より小さいものは除く最後に $ J $ が $ (L_\lambda,\in) $ に関する識別不可能集合であることの証明であるが、論理式 $ \varphi(v_1,\cdots,v_n) $ と $ J $ の要素の増大列 $ w_{\xi_1}\lt \cdots\lt w_{\xi_n} $ に対し充足関係
$ L_\lambda \vDash \varphi(w_{\xi_1},\cdots,w_{\xi_n}) $は$ L_\lambda \vDash \varphi(t^{L_\lambda}(\alpha_1,\cdots,\alpha_m,u_{\xi_1}), t^{L_\lambda}(\alpha_1,\cdots,\alpha_m,u_{\xi_2}),\cdots, t^{L_\lambda}(\alpha_1,\cdots,\alpha_m,u_{\xi_n})) $と表すことができ $ J $ の要素に依存しない (証明終)。
(参考文献) Thomas J. Jech 著 Set Theory
(関連リンク)
0# (zero-sharp) 一回目
0# (zero-sharp) 二回目
0# (zero-sharp) 三回目
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0# (zero-sharp) 六回目
Kunenの定理 (準備編)
0# (zero-sharp) 七回目
Kunenの定理 (証明編)
コメント
おとといはつくばに泊まりということで、なんとか記憶とその場で考え直した 「証明」で $ 0^{\sharp} $ についての定義まで行きつきました。まだ一意性を示していないので、「定義」 というにはやや問題があるのですが、いつまでたっても定義がないというのも ちょっとということで。
ところで予想されたようにいくつか誤りがあります。
それから証明がごちゃごちゃしている部分もあります。とはいえ、ストーリー はどうしても教科書通りになってしまうとしても、一度時間をおいて記憶をた どるか自分で考え直したものを書いた方が自分のためになるし、教科書の表現 とはかなり異なってくるので面白いという利点はあると思います。誤りは後で直せば良いし、ごたごたした部分に関しては、エレガントな証明を 読む前に「ごたごた」を経験した方が内容を良く理解できる場合が多いので、 それほど悪いものではないような気がします。全部理解してから自分なりに再 構成して記載するのが理想なのでしょうが、なんせにわとり以下の記憶力 (笑)。 ある程度の段階で出力しないと忘れてしまいます。
というわけで次回の $ 0^{\sharp} $ に関する話題は基本的な部分を一気に書きます。実は定義まで行きつくと (自 分としては結構大変だった)、ごくごく基本的な部分に関する証明はそんなに 難しくないし、不思議なことにこの概念がそれなり自然なものに見えてくるの です。目標はラムゼイ基数の存在が $ 0^{\sharp} $ の存在を導くことと、 $ L $ に対する超越性に関するいくつかの定理についての記載です。できれば 初等的埋め込み $ j:L \rightarrow L $ の存在と $ 0^{\sharp} $ の存在の同値性まで (これは分けて書きます)。Jensen's Covering Theorem についての 証明は無理そう。恐らく結果だけ。
もちろんこんな簡単なことで $ 0^{\sharp} $ を理解したなんてことは言いませんが、色々お楽しみ中であることは事実なのです。
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昨日の日記のコメント欄に書いたように本日はつくばに泊まりです。宿ではそ れなり暇なので、本日は $ 0^{\sharp} $ の定義まで教科書なしフリーハンドで記述します。従っていくつか誤りがある かも知れませんが、問題があれば後で修正致します。もちろん誤りに対するつっ こみは大歓迎です。
$ \Sigma $ を E.M.集合とします。
(定義) 任意の $ (\Sigma,\alpha) $ モデル $ \Sigma=\Sigma(\mathcal{A}, I) $ に対して $ \mathcal{A}=(A,E) $ が整順であるとき E.M.集合 $ \Sigma $ は整順であると言う。
(命題) 次の条件は同値
(1) $ \Sigma $ は整順(証明)
(2) ある $ \alpha \ge \omega_1 $ に対して $ (\Sigma, \alpha) $ モデルが整順
(3) すべての $ \omega \le \alpha \lt \omega_1 $ に対し $ (\Sigma, \alpha) $ モデルが整順
(1) から (2) が導かれるのは自明である。(2) が成り立つと仮定する。 $ \mathcal{A}=(A,E) $ を整順なモデルとし $ (\mathcal{A}, I) $ が $ \alpha $ モデルになるものする。このとき $ \beta \lt \alpha $ に対し対応する $ I $ の切片を $ J $ とすると $ ((H^{\mathcal{A}}(J), F), J) $ が $ \Sigma $ の整順な $ (\Sigma,\beta) $ モデルとなる。ここで $ F $ は $ E $ の $ H^{\mathcal{A}}(J) $ (の積) への制限である。
(3) が (1) を導くことを示すために (1) の否定を仮定する。 $ \mathcal{A}=(A,E) $ を整順でないモデルで $ (\mathcal{A},I) $ が $ (\Sigma,\alpha) $ モデルとなっているものとする。仮定により $ A $ の元の $ E $ に関する無限減少列 $ a_0 \gt a_1 \gt \cdots \gt a_n \gt \cdots $ が存在する。E.M.集合の定義により各 $ n $ に対してスコーレム項 $ t_n $ と $ c_{n,1} \lt c_{n,2} \cdots \lt c_{n,k_n} \in I $ が存在し $ a_n=t_n^{\mathcal{A}}(c_{n,1},c_{n,2}, \cdots, c_{n,k_n}) $ と書ける。ここに現れる $ c_{n,k} $ 全体を $ J $ とすると $ J $ は $ E $ に関し可算な順序型をもち $ ((H^{\mathcal{A}}(J), F), J) $ は整順でないE.M.集合の可算モデルとなる。 ここで $ F $ は $ E $ の $ H^{\mathcal{A}}(J) $ (の積) への制限である (証明終)。
以下 $ (\Sigma,\alpha) $ を考察する時 $ \alpha\gt \omega $ とし、さらに極限順序数であるとします。
(定義) E.M.集合 $ \Sigma $ が非有界であるとは任意の $ (\Sigma,\alpha) $ モデル $ (\mathcal{A},I) $ に対し $ I $ が $ E $ に関する順序数の集合として $ \mathrm{Ord}^{\mathcal{A}}(A) $ で非有界であること。
(命題) 次の条件は同値
(1) $ \Sigma $ は非有界(証明)
(2) ある極限順序数 $ \alpha $ に対し $ (\Sigma,\alpha) $ モデルは非有界
(3) 各スコーレム項 $ t $ に対し $ \Sigma $ は次の論理式を含む。$ t(v_1,\cdots,v_n) $ が順序数ならば $ t(v_1,\cdots,v_n) \lt v_{n+1} $
(1) から (2) は自明である。(定義) $ \Sigma $ をE.M.集合とする。 $ \Sigma $ が非有界で任意のスコーレム項 $ t $ に対し次の論理式を含む時 remarkable であると言う。(2) を仮定する。 $ a_1\lt a_2\lt \cdots\lt a_n \in I $ に対し $ \gamma=t^{\mathcal{A}}(a_1,a_2,\cdots,a_n) $ が順序数であると仮定する。このとき非有界性により $ \gamma\lt a_{n+1}, a_n\lt a_{n+1} $ を満たす $ a_{n+1} \in I $ が存在するが、E.M.集合の (識別不可能性に関する) 定義によりこれは (3) の論理式が $ \Sigma $ に属することを意味する。
(3) から (1) を得るには論理式 $ \exists{v_2}(v_1 \lt v_2) $ のスコーレム関数を考えれば良い。たぶん。←嘘です。 $ I $ の要素をスコーレム項で表して (3) を適用するのが正解です。
$ t(v_1,\cdots,v_m,v_{m+1},\cdots,v_{m+n}) $ が順序数で $ t(v_1,\cdots,v_m,v_{m+1},\cdots,v_{m+n})\lt v_{m+1} $ ならば $ t(v_1,\cdots,v_m,v_{m+1},\cdots,v_{m+n})= t(v_{1},\cdots,v_m,v_{m+n+1},\cdots,v_{m+2n}) $これは最初ほんと意味が分からなかったです。ただし下記命題の意味を吟味 すると妥当な仮定であるような気がしてくるので不思議なものです。
(命題) $\mathcal{A}=(A,E)$ をモデルとし $(\mathcal{A},I)$ を非有界 E.M.集合の $\Sigma$ の $\alpha $ モデルとする。 $I$ の要素の数え上げを $(i_\xi)_{\xi\lt \alpha}$ と書くことにする。 このとき次の条件は同値。
(1) $\Sigma$ は remarkable(証明)
(2) $(A,E)$ での順序数 $\beta$ が $\beta\lt i_\omega$ を満たすとき $\beta \in H^{\mathcal{A}}(\{i_n:n\lt \omega\})$
(3) $\gamma$ を極限順序数とする。$(A,E)$ での順序数 $\beta$ が $\beta\lt i_\gamma$ を満たすとき $\beta \in H^{\mathcal{A}}(\{i_\xi:\xi\lt \gamma\})$
まず (2) が (1) を導くことを示す。 $ a_1\lt a_2\lt \cdots\lt a_m\lt b_1\lt b_2\lt \cdots\lt b_n\lt c_1\lt c_2\lt \cdots\lt c_n $ を $ I $ の元の上昇列とする。ここで記述不可能性により $ b_1=i_\omega $ としても一般性を失わない。ここで (1) 即ち remarkable の前提条件を仮定する。 即ち $ t^{\mathcal{A}}(a_1,\cdots,a_m,b_1,\cdots,b_n) $ が順序数であり $ t^{\mathcal{A}}(a_1,\cdots,a_m,b_1,\cdots,b_n)\lt i_\omega. $ すると $ a_1,\cdots,a_m \lt i_\omega $ なので $ I $ の元の上昇列 $ u_1,\cdots,u_r $ で $ u_i \lt i_\omega \quad (1 \le i \le r) $ かつ $ a_m\lt u_i \quad \quad (1 \le i \le r) $ を満たすものと、スコーレム項 $ s $ が存在しスコーレム項と $ I $ の要素の増大列で順序数を定義するとき、その順序数より大きな $ I $ の要素は「どうでもよい」という感じでしょうか。一般の順序数を識別不可能 集合の下の方から定義するという感じ。たぶん。$ \mathcal{A}\vDash t^{\mathcal{A}}(a_1,\cdots,a_m,b_1,\cdots,b_n)= s^{\mathcal{A}}(u_1,\cdots,u_r) $を満たす。すると識別不可能性により$ \mathcal{A}\vDash t^{\mathcal{A}}(a_1,\cdots,a_m,c_1,\cdots,c_n)= s^{\mathcal{A}}(u_1,\cdots,u_r) $も成立し、従って$ \mathcal{A}\vDash t^{\mathcal{A}}(a_1,\cdots,a_m,b_1,\cdots,b_n)= t^{\mathcal{A}}(a_1,\cdots,a_m,c_1,\cdots,c_n) $こんどは (1) を仮定して $ \beta\lt i_\omega $ とする。このときスコーレム項 $ t $ と $ I $ の元の上昇列 $ i_{\xi_1}\lt \cdots\lt i_{\xi_m} $ により $ \beta = t^{\mathcal{A}}(i_{\xi_1},\cdots,i_{\xi_m}) $ と表すことができる。もしすべての $ i_{\xi_j} \quad (1 \le j \le m) $ が $ i_\omega $ 未満ならば証明完了である。そうでない場合 $ r $ を $ \beta \lt i_{\xi_r} $ となる最小の添字とする。Remarkablity (非有界性も内包する) により $ i_{\xi_j} (j \ge r) $ は十分に大きいと仮定して良い。さらに仮定により $ i_{\xi_{r-1}} \le \beta \lt i_\omega $ なので十分大きな自然数 $ \xi_{r-1} \lt n $ をとれば $ \beta = t^{\mathcal{A}}(i_{\xi_1},\cdots,i_{\xi_{r-1}}, i_{n}, i_{n+1}, \cdots) $ が成り立つ。(1) (3) の同値性の証明も同様である (証明終)。
やっと $ 0^{\sharp} $ を定義する準備ができました。
(定義) 整順で remarkable (非有界性を内包する) である E.M.集合 $ \Sigma $ を $ 0^{\sharp} $ と呼ぶ。
最大の疑問は「こんな複雑な (わけのわからん) 定義の実体が存在するのか?」 ということですが、次回以降記載するようにラムゼイ基数という、一見弱コン パクト基数をちょっと拡張したような基数 (実際可測基数よりは小さい) の存 在を仮定すると $ 0^{\sharp} $ の存在を証明することができます。ただし $ L $ に対する影響力は、弱コンパクト基数と $ 0^{\sharp} $ では大違いです。
(参考文献) Thomas J. Jech 著 Set Theory
(関連リンク)
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Kunenの定理 (準備編)
0# (zero-sharp) 七回目
Kunenの定理 (証明編)
コメント
今日もつくば出張です。日帰りの予定。予定。
コメント_かがみ [結局泊まり。お約束?]
今日は $ 0^{\sharp} $ についての二回目ですが、はやしさんのところで レーヴェンハイム=スコーレ ムの定理に関しての話題に言及されている こともあるので、まずスコーレムの定理に関する復習です。
(定理 レーヴェンハイム=スコーレム)
$ \mathcal{A}=(A, \cdots) $ を可算言語 $ \mathcal{L} $ の理論 $ T $ のモデルで $ |A| \ge \aleph_0 $ でを満たすものとして、 $ X \subset A $ を無限集合とする。このとき集合 $ X \subset B \subset A $ で $ |X\vDash |B|,\, \mathcal{B}=(B,\cdots) \prec \mathcal{A} $ を満たすものが存在する。特に理論 $ T $ 任意のモデルに対し初等的同値な可算部分モデルが存在する。(証明) まずモデル $ \mathcal{A} $ の部分モデル $ \mathcal{B} $ に対して $ \mathcal{B} \prec \mathcal{A} $ であるためには、タルスキーの判定条件により
$ \mathcal{L} $ に属する任意の論理式 $ \varphi(x_0,\cdots,x_n) $ と $ a_1,\cdots,a_n \in A $ に対し $ \mathcal{A} \vDash \exists{a}(\varphi(a, a_1,\cdots,a_n)) $ ならば $ \mathcal{A} \vDash \exists{b\in{B}}(\varphi(b, a_1,\cdots,a_n)) $が成立すれば良いことに留意します。ここで $ \varphi(x_0,\cdots,x_n) \in \mathcal{L} $ に対し ( $ \mathcal{A} $ での) スコーレム関数 $ h^{\mathcal{A}}_\varphi : A^n \rightarrow A $ を次のように定義します。
$ a_1,\cdots,a_n \in A $ に対し $ \mathcal{A}\vDash \exists{a}(\varphi(a,a_1,\cdots,a_n)) $ が成立する時 $ h^{\mathcal{A}}_\varphi(a_1,\cdots,a_n) $ の値は $ \varphi(a,a_1,\cdots,a_n) $ を満たす $ a\in{A} $ を任意に選択したもの。そうでない場合 $ 0. $明らかに $ \mathcal{A}\vDash \exists{a}(\varphi(a,a_1,\cdots,a_n)) $ が成り立つとき $ \mathcal{A}\vDash \varphi(h^{\mathcal{A}}_\varphi(a_1,\cdots,a_n),a_1,\cdots,a_n) $ が成り立ちます。スコーレム関数の「構成」には選択公理が必要ですが、 $ A $ 上に定義可能な整列順序が定義されている場合 (例えば $ A = L_\alpha $ の場合) 論理式を満たす最小元をとることにより $ h^{\mathcal{A}}_\varphi $ も定義可能にすることができます。
(定義 スコーレム閉包 Skolem hull)
$ X\subset{A} $ とする。 $ X\subset Y \subset A $ で任意の論理式 $ \varphi(x_0,\cdots,x_n) $ と $ y_1,\cdots,y_n \in Y $ に対する $ h^{\mathcal{A}}_\varphi(y_1,\cdots,y_n) $ に関して閉じている ( $ h^{\mathcal{A}}_\varphi(y_1,\cdots,y_n) \in Y $ ) 最小の集合 $ Y $ を $ X $ のスコーレム閉包 (Skolem hull) と呼び $ H^{A}(X) $ と書く。スコーレム閉包は $ X_0=X $ から始め、 $ X_0 $ の要素に対するスコーレム関数の値全体をつけ加えたもの全体の集合を $ X_1. $ $ X_1 $ の要素に対するスコーレム関数の値全体をつけ加えたのも全体を $ X_2 $ と以下帰納的に定義すれば $ \bigcup_{n \in \omega} X_n $ により得られます。もとの言語が可算言語であったことを考慮すると $ |H^{A}(X)| = |X| $ であることも明らかです。そしてタルスキーの判定条件により $ (H^{A}(X),\cdots) \prec \mathcal{A} $ が成り立ちます (証明終)。
本定理の哲学的な考察について、私が公の場で余計なことをしゃべらないのは 正しい態度だと思います (^^。
$ 0^{\sharp} $ に戻ります。スコーレム関数は後で大活躍します。
(定義)
$ \mathcal{A}=(A, E) $ を無限順序数 $ \alpha $ に対する $ (L_\alpha,\in) $ と初等的同値なモデルとして、 $ I \subset A $ を $ \mathcal{A} $ の ( $ E $ に関する) 順序数からなる識別不可能な無限集合であるとする。このとき $ \Sigma(\mathcal{A}, I) $ を次のように定義する。(定義) E.M.集合 (Ehrenfeucht-Mostowski)$ \Sigma(\mathcal{A}, I) = \{ \varphi\in\mathcal{L}\,:\, A \vDash \exists{a_1,\cdots,a_n \in I}(a_1\lt \cdots \lt a_n \wedge \varphi(a_1,\cdots,a_n)) \} $
なお定義中の不等号は $ E $ での所属関係を表すものとします。識別不可能集合上での「真」を表す集合と 考えられると思います。たぶん。
極限順序数 $ \lambda $ に対する $ (L_\lambda,\in) $ と初等的同値なモデル $ \mathcal{A}=(A,E) $ に対する $ \Sigma(\mathcal{A}, I) $ の形の集合 $ \Sigma $ を E.M.集合と呼ぶ。次の事実が成立します。
$ \Sigma $ を E.M.集合とし $ \alpha $ を無限順序数とする。このとき次の条件を満たすモデル $ \mathcal{A}=(A,E) $ と順序数からなる識別不可能集合 $ I\subset{A} $ が存在する。 $ \mathcal{A}=(A,E) $ は同型を除いて一意に定まる。ここで otp は順序型を表すとします。 E.M.集合 $ \Sigma $ に対し一意に定まるモデルと識別不可能集合の対 $ (\mathcal{A}, I) $ を $ (\Sigma, \alpha) $ モデルと呼びます。証明の概略ですが、まず一意性に関しては $ \Sigma = \Sigma(\mathcal{A},I) = \Sigma(\mathcal{B}, I) $ として $ \pi:I \rightarrow J $ を順序同型とします。(4) により任意の $ A $ の要素は $ a_1,\cdots,a_n \in I,\,a_1\lt \cdots \lt a_n $ に対する $ t^{\mathcal{A}}(a_1,\cdots,a_n) $ の形に表現することが可能です。ただし $ t^{\mathcal{A}}(a_1,\cdots,a_n) $ はスコーレム関数の合成により得られる項、即ちスコーレム項とします。 この事実を用い $ \pi $ を拡張します。即ち(1) $ (A,E) $ は極限順序数 $ \lambda $ に対する $ (L_\lambda, \in) $ と初等的同値で $ I $ は「順序数」からなる識別不可能な無限集合
(2) $ \Sigma = \Sigma(\mathcal{A},I) $
(3) $ \mathrm{otp}(I) = \alpha $
(4) $ A = H^{\mathcal{A}}(I) $
$ \pi(t^{\mathcal{A}}(a_1,\cdots,a_n)) = t^{\mathcal{B}}(\pi(a_1),\cdots,\pi(a_n)) $と「定義」します。この「定義」が well defined で所属関係を保存するかど うかですが、上昇列 $ a_1,\cdots,a_n\in{A},\, c_1,\cdots,c_m\in{A} $ としスコーレム項 $ t,s $ に対し
$ t^{\mathcal{A}}(a_1,\cdots,a_n)=s^{\mathcal{A}}(c_1,\cdots,c_m) \quad (a) $が成立していると仮定します。 $ I $ は無限集合なので (識別不可能性を考量すると) $ a_1,\cdots,a_n,c_1,\cdots,c_m $ はすべて異なると仮定して一般性を失いません。 $ d_1,\cdots,d_{n+m} $ を $ a_1,\cdots,a_n\in{A},\, c_1,\cdots,c_m\in{A} $ を昇順に並べた列とし $ \varphi(x_1,\cdots,x_{n+m}) $ を $ d_1,\cdots,d_{m+n} $ を代入したときに (a) が成り立つことを主張する論理式とします。すると E.M.集合の定義により $ \varphi(x_1,\cdots,x_{n+m}) \in \Sigma $ が成立し、従って $ \mathcal{B} $ で $ t^{\mathcal{B}}(\pi(a_1),\cdots,\pi(a_n))= s^{\mathcal{B}}(\pi(c_1),\cdots,\pi(c_m)) $ が成立します。所属関係を保つことに関しても同様です。
次に存在についての証明の概略。まず $ \Sigma = \Sigma(\mathcal{A}, I) $ を満たす $ \mathcal{A}, I $ を固定し $ \alpha $ を無限順序数とします。集合論の言語に $ \alpha $ 個の定数記号 $ c_{\xi} \quad (\xi\lt \alpha) $ を追加した言語を考え、その上の理論 $ T $ として
(1) $ c_\xi $ は順序数を考えます。 $ T $ はモデルをもちます。実際 $ T $ の有限部分を $ T_0 $ とすると、 $ T_0 $ に現れる閉論理式全体の合接は $ \sigma(c_{\xi_1},\cdots,c_{\xi_m}) $ の形で表現することが可能です。すると $ I $ が無限集合であることにより、増大列 $ i_1,\cdots,i_m \in I $ が存在し $ \mathcal{A} \vDash \sigma(i_1,\cdots,i_m). $ 言い換えると $ c_{\xi_j} $ の解釈を $ i_j $ とすることにより $ (A, E, i_1,\cdots,i_m) $ は $ T_0 $ のモデルとなります。従ってコンパクト定理により $ T $ はモデル $ \mathcal{B}=(B,N,(c_\xi)_{\xi\lt \alpha}) $ を持ちます。以下容易に分かるように $ I=\{c_\xi:\xi\lt \alpha\} $ とし $ C=H^{\mathcal{B}}(I) $ とすれば $ \Sigma((C,N), I) $ が求めるものとなります (証明終)。
(2) $ c_{\xi} \lt c_{\eta} \quad (\xi \lt \eta) $
(3) $ \varphi(x_1,\cdots,x_n) \in \Sigma $ と上昇列 $ c_{{\xi}_1},\cdots,c_{{\xi}_n} $ に対する $ \varphi(c_{{\xi}_1},\cdots,c_{{\xi}_n}) $ 全体
E.M.集合に対しさらにいくつかの条件 (well founded, unbounded, remarkable) を満たすものの存在を仮定すると、正式に $ 0^{\sharp} $ を定義することが可能となります。その辺りは次回以降に続きます。
(参考文献) Thomas J. Jech 著 Set Theory 。 丸写しです。ご勘弁の程を。
(関連リンク)
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Kunenの定理 (準備編)
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コメント
昨日からおおはまりでまだつくばにいます。ソフトではなく、出荷時のテスト 環境作りが大変で。今日一日色々実験してなんとか目処がたちました。
それはそうと、つくばでのホテル滞在がこの一年で 10回になりまして、なん と現金5000円のキャッシュバックだそうな。これはおいしいです。もちろん会 社にはわかりません。あれです。会社の偉い人に頼まれてちょっと高いのを買 いに行く時、激安ポイントなしのお店では買わず、少々高くともポイントがつ くお店に行くのと同じです。もしかして、そんな極悪なことをするのは私だけ? いやいやそんなことはないでしょう (笑)。
申しわけありませんが昨日のコメントへの反応は後で (^^。
コメント
最近「三平方の定理」をギリシア時代の数学者の名前で表現した検索が異様に多 いのです。なにかテレビかなんかで紹介があったのでしょうか。知っている方が おられましたら教えて頂けるとうれしいです。
とはいうものの、なんせ内容が こんなの ですから、いやはやなんと言いますかこれも一種の検索はずれと言うべきでしょう。
コメント_Y.Kumagai [NHKの『ピタゴラスイッチ』くらいしか思い付きませんけど・・・珍しいこと書いてる...]
_通りすがり [ヘソマガリな私はポアンカレモデルとかで上記定理の「反例」を示しちゃいそうで怖いで...]
_かがみ [Y.Kumagaiさんこんにちは。反応が遅れて申しわけありません。そうですか、N...]
_かがみ [通りすがりさんこんにちは。なるほど、確かに非ユークリッド幾何ではピタゴラスの定理...]
_通りすがり [ちなみに、ポアンカレ星(?)にはこのプログラムでいけます。http...]
_かがみ [わわっ、これは面白いですね。でも情けないことに幾何学の直感は小学生以下なので、い...]
出張中です。準備万端出荷用のマスターを作り、昨日こちらに到着しました。
ところが到着直後にお客さまよりメールがあり、一つバグを発見されたとのこ
と。
あわわわっ、マスターの作り直しですか (汗)。というわけで今日は半日ホテ
ルに缶詰でプログラムの修正しました。なんとか直ったような。いや、別に難
しいことではないのですが、
自明だと思ってテストをしない (笑)癖をなんとかしないと。前にも書きましたが、作っているのは Linux 組込み 用のものなのですが、開発機は黒マックです。緊急事態なので Parallels Desktop 上の FreeBSD の Linux シミュレーターで作りました。普通は「本当 の」Linux でコンパイルするのですが、いやはや出荷ヴァージョンが Mac 上 開発物件とは、お客さまには口が裂けても言えないのです (^^。
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つくばから帰ってきました。ですが明日からまた二泊三日で出張です。うーむ、 さすがに丸々一週間空けると結構仕事がたまってるもので。そもそも先週と今 週はほとんどおうちにいないではないか。いずれにしても今回の出張を乗り切 れば本当の一段落のはずです。
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会社に戻ったらさっそくお呼びが。なので一泊二日でつくばに出張です。
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今日は九連休最終日です。いつもですと家でごろごろ過ごして終わってしまう のですが、今回はなかなか充実したお休みを過ごせたと思います。そうはいっ てもサマースクールの間は面白くて楽しくて、全く疲れを感じなかったのです が、藤沢に戻ってきたらどっと疲れが (笑)。さらに会社にきたメールを読む と、今のところバグとかは特にないようなのですが、仕様追加のご要望が (汗)。
うれしいことに今週末と来週末は連続三連休のようですので、明日からぼちぼ ちということで (^^。
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楽しかったサマースクールも昨日が最終日でした。昨日の講義は加茂先生の 「集合論のブール値模型」四回目、藤田先生の「ルベーグ可測性にかんするソ ロヴェイのモデル」の四回目でした。
藤田先生での講義ではソロヴェイの定理の一部分の証明がメインでした。即ち
「ZFC+到達不可能基数の存在」が無矛盾であれば次の条件を満たす ZFC のモ デルが存在する一昨日のランダム実数の性質に加え、レヴィの崩壊、その他各種のテクニック が駆使され、私自身完全に追いかけ切れていない面が多々あるのですが、証明 の方向性についてはおおむね理解できたと思っています。もちろん証明の細部 についても当然理解しなければならないので、現在ノートと藤田先生の講義予 稿を読みながら復習中です。少々時間がかかるかも知れません。(*) 実数の集合で順序数の可算列のみで定義可能なものはすべて可測
それにしてもコーエンの成果 (強制法) のわずか一年後にこれだけの構想とテ クニックを使い、実数の可測集合、ベールの性質を持つ集合、完全集合に関す る驚くべき結果を出したソロヴェイの洞察力の深さには驚くばかりです。
サマースクールの参加は素人ということで、色々ご迷惑をおかけしたと思うの ですが、私自身はとても楽しく充実した四日間を過ごすことができました。
また、今回の参加に関して渕野先生、藤田先生、それから主催された先生方に は大変お世話になりました。どうもありがとうございます。
コメント_くるる [お疲れ様〜。充実した日々を過ごされたと聞いて私も嬉しいです。]
_かがみ [くるるさんこんにちは。くるるさんに嬉しいと言って頂き私も嬉しいです。とても面白い...]
朝台風の影響でとしゃぶりの雨でした。やっとの思いでバス停まで行ったので すが、なかなかバスが来ません。でも大丈夫。一時間目の講義を担当して下さ る先生も同じバスを待っていました。
昨日のお題目は加茂先生の「集合論のブール値模型」三回目、渕野先生の「強 制法入門」三回目、藤田先生の「ルベーグ可測性にかんするソロヴェイのモデ ル」の三回目でした。
ブール値モデルと強制法に関しては、やはり専門家の方の講義は見識が高く、 本だけでは得られない面白い事実や考え方を学べたと思います。
昨日の講義で一番興味があったのは藤田先生の「ランダム実数」についてのお 話です。モデル $ M $ 上で測度が零でないボレル集合全体がつくる半順序集 合 (順序は包含関係そのままとする。コーエン半順序とは逆) についての強制を 考えるのです。すると比較的容易に分かるようにジェネリック $ G $ の共通部分は一点からなり、それを $ r $ とすると $ M[r]=M[G] $ が成立し、 $ r $ を $ M $ 上のランダム実数と言うのです。
これだけでは何のことか分かりにくいのですが、実際にはボレルコードを導入 し、それに対応するボレル集合のいくつかの関係の絶対性を利用して議論を行 うのです。そして、ボレルコードに対応する $ M $ でのボレル集合と、元のモデルでの同じコードのボレル集合に関して、特に包 含関係、共通部分が空であること、零集合であること等のコードを通した絶対 性が成り立ち、強制を使わないランダム実数の特徴づけも可能となります。
$ r $ がランダム実数である条件は次の通り。$ r \not\in \bigcup \{ B_f\,:\, f\in{\mathrm{BC} \cap M} \wedge B_f\in{\mathcal{N}}\} $
ここで $ \mathrm{BC} $ はボレルコード全体の集合で、 $ B_f $ は対応する元のモデルでのボレル集合です。 $ \mathcal{N} $ は零集合全体でありボレルコードに対し絶対的です。要するに $ M $ でのボレルコードに対応するボレル零集合 (これは $ M $ からはみ出す可能性あり) いずれの要素にもなっていないということです。特に $ M $ が可算モデル、もっと弱い条件で $ (2^{\aleph_0})^M $ が (外から見て) 可算の場合、ほとんどすべての実数はランダム実数になりま す。あっ、すごくおおざっぱで分かりにくい記述で申しわけありません。でも ほんとわくわくしてくるでしょ(^^。ランダム実数については落ち着いた段階で きちんと書きたいと思います。
(*) 上記記述に誤りがあればすべて私の責任です。もちろん分かりにくさもです。
その後上記の概念 (その他にも色々あり) を利用しソロヴェイの定理の証明に 進むのですが、この辺りからちょっとついてゆくのが苦しくなってきました。 現在復習中 (笑)。
講義終了後懇親会。若くて優秀な方や先生方と色々お話ができとても楽しめました。
コメント
寝坊しました (笑)。9時半始まりなのですが、目が覚めたら 8時40分。静岡大 学までバスで30分弱です。大急ぎで準備してバス停へ。なかなか来ない場合タ クシーに乗る必要もあるかな、と思っていたら、Fu さんがバス停のところに いるではないか。やれやれ、これはもうすぐバスが来るのであろうと一安心です。
そもそも近眼で老眼なので、ノートをとるときと黒板を見る時、別の眼鏡をか けるかけないとよく見えない場合もあるのですが、なるべくそれを避けるため、 厚かましくも一番前の席を独占しているのです。なので、遅刻したらほんとかっ こわるいですし、なにより貴重な機会ですから、全部聞かないともったいない です。
今日の講義は加茂先生の「集合論のブール値模型」一回目、渕野先生の「強制 法入門」二回目、藤田先生の「ルベーグ可測性にかんするソロヴェイのモデル」 二回目でした。ブール値モデルと強制法に関しては一度勉強したことがあるの で、まだついてゆけるのですが、藤田先生の講義での「ボレルコード」が最初 (というか宿で復習するまで) 直感的につかめず、なんかすごくまぬけな質問 をしたかも知れません。といいますか、こういう場合厚かましい方が得なので、 もしかしたら質問の数は一番多いかも。で、先生のお話によると、
鏡さんが理解できていれば大丈夫という指標になる (笑)ということなので、まぬけな質問もご容赦の程をということで。
「ボレルコード」は一度「巨大基数の集合論」で目を通した時、なんのことか
ちんぷんかんぷんだったのですが、講義を聴いた後宿に帰り真面目に考えたと
ころなんとか。ただし、それに付随する絶対性について、「Shoenfield の
絶対性定理」が必要になる場合があるそうで、その辺りは帰ってから真面
目に調べようと思います。明日 (今日) 以降この話がランダム実数につながる
そうですのでとても楽しみです。
というわけで今日は寝坊しないように (^^。
コメント
静岡駅到着が 11時15分頃。藤沢を出る頃は曇っていて、それほど温度も高く なかったのですが、静岡は晴天で暑いのなんのって (^^。会場に着く前に少々 ばててしまいました。あと Fu さんがいたので、こちらもご挨拶。お会いでき たのがうれしくって、少々余計なことをしゃべり過ぎたかも知れません。ごめ んなさい。
講義は渕野先生の「強制法入門」と藤田先生の「ルベーグ可測性にかんするソ ロヴェイのモデル」の一回目。昨日は初日ということで一時間ずつでした。 最初ということもありなんとかついて行くことが出来ました。
講義終了後先生方の夕食 (というか飲み会) に同席させて頂き、集合論の色々 な話を聞くことができ、こちらも本当に楽しかったです。集合論の先生方はみ な素晴らしい方で、私のような素人の質問についても、とても真面目に答えて 頂きほんと感激です。今回の経験により即座に集合論が分かるようになるとは もちろん考えていませんが、なんというか、一人で本を読むのとは全然違う貴 重な体験だと思います。
明日からがますます楽しみです。
コメント
三泊四日で 「数学基礎論サマースクール2007」に行ってきます。
コメント_miya [いってらっしゃい。中高を静岡ですごしたことがあります。のんびりとしたところです。...]
_Fu [静岡でお会いできるのを楽しみにしております。というわけで、サマースクールで会いま...]
_かがみ [miyaさんこんにちは。今日の静岡はとっても暑かったです。もう九月なので涼しいの...]
_かがみ [Fuさんこんにちは。というか静岡で会えましたね。一日目はそれほど難しくなかったの...]
久々の集合論雑記なのですが、数回に分けて $ 0^{\sharp} $ の話題について記載したいと思います。 $ 0^{\sharp} $ 自体それほど分かりやすい概念ではないと思うのですが、構成可能性に対する ある種の超越的概念であり、計算可能性に対するテューリング次数のごと く、「構成可能性」に対するオラクルのようなものらしいです。たぶん。 さらに sharp の階層を考えること自体、テューリング次数との類推が強いようです。
まず準備として、モデルでの「識別不可能集合 (indiscernible set)」の概念 を導入します。
(定義) 識別不可能集合
$ \mathcal{A}=(A, \in) $ を集合論のいくつかの公理 (少なくとも amenable 位) を満たすモデルとし $ \kappa \subset A $ とし、さらに任意の $ \alpha<\kappa $ が $ A $ の要素になるものとします。このとき $ I\subset\kappa $ が $ \mathcal{A} $ の識別不可能集合とは次の条件を満たすこと。「 $ 0^{\sharp} $ が存在する」という主張は後述の remarkable E.M 集合の存在により定式化さ れるのですが、今回は当面 Jech 本の丸写しで、同値 (Silver による) である下 記の条件が成立するとき「 $ 0^{\sharp} $ が存在する」と称することとします。任意の論理式 $ \varphi(x_0, x_1, \cdots, x_n) $ と $ I $ の元の上昇列 $ \alpha_0\lt \alpha_1\lt \cdots\lt \alpha_n, \beta_0\lt \beta_1\lt \cdots\lt \beta_n $ に対し $ \mathcal{A}\vDash \varphi(\alpha_0,\alpha_1,\cdots,\alpha_n) \leftrightarrow \mathcal{A}\vDash \varphi(\beta_0,\beta_1,\cdots,\beta_n) $
(定義 Silver indiscernible) $ 0^{\sharp} $ が存在するとは次の条件を満たすこと。
( $ V $ での) 非可算基数 $ \kappa \lt \lambda $ に対して(1.a) (1.b) とも相当都合の良い (というか超越的な) 仮定と考えられますが、 実際今後証明するようにこれらの条件は「弱コンパクト基数の存在」よりは強 く、「可測基数の存在」よりは弱いことが分かります。 (1.a) と反映の原理を使うことにより、任意の非可算基数 $ \kappa $ に対し $ L_\kappa \prec L $ が成立します。さらに非可算基数の識別不可能性により、次の事実が成立します。$ (1a)\,(L_\kappa,\in) \prec (L_\lambda, \in) $
$ (1b) $ すべての ( $ V $ での) 非可算基数を含む Ord の閉非有界なクラス $ I $ がただ一つ存在し、非可算基数 $ \kappa $ に対し次の条件を満たす。
$ (1b.1) \, |I\cap \kappa| = \kappa $
$ (1b.2) \, I\cap\kappa $ は $ (L\kappa, \in) $ での識別不可能集合
$ (1b.3)\, L_\kappa $ の任意の要素は $ L_\kappa $ 上 $ I\cap\kappa $で定義可能の要素で定義可能。
(命題) 本当の $ \aleph_1 $ は $ L $ で到達不可能。
(証明) 実際本当の $ \aleph_1 $ は $ L $ でも正則であり (正則性の D-absolute による)、同様に $ \aleph_\omega $ は $ L $ でも極限基数。ところが識別不可能性により $ \aleph_1 $ も $ L $ の極限基数。 $ L\vDash \mathrm{GCH} $ なので $ \aleph_1 $ は到達不可能。
集合論でよく見られる「ややひきょうな感じがする都合の良い証明」です。実際 $ L $ の中に入ると、識別不可能性により、本当の非可算基数は大小関係くらいしか 分からないわけです。たぶん。非可算基数の識別不可能性により $ L $ での真偽を定義可能です。まず論理式 $ \varphi(x_0,\cdots,x_n) $ の自然数を使ったコード化を $ [\varphi(x_0,\cdots,x_n)] $ と表し、充足関係が極限順序数 $ \alpha $ に対する $ L_\alpha $ に対し一様に定義可能であることと考慮すると $ \omega $ の部分集合で $ L_{\aleph_\omega} $ 、即ち $ L $ の $ I $ の上昇列に関して真である論理式を表現する集合 (これを $ 0^{\sharp} $ と呼ぶ!)
$ \{[\varphi(x_0,\cdots,x_n)]\,:\, L_{\aleph_\omega}\vDash \varphi(\aleph_1,\aleph_2,\cdots,\aleph_{n+1})\} $は $ V $ で定義可能な集合となります。もちろんこの集合は $ L $ では定義可能でありません。識別不可能性により、そもそも任意の非可算基数が $ L $ で定義不可能です。さらに自由変数をもたない論理式に対して同様の集合
$ \{[\varphi] \,:\, L_{\aleph_\omega} \vDash \varphi\} $が $ V $ 上定義可能であり、初等性によりこの集合が $ L $ 上の真偽を表現することになります。
特に印象的で分かりやすい結果を述べるため、おおがかりな定義を採用しまし たが、天下り過ぎいまいち具体性に欠けるのが難点です。次回からは Ramsey 基数に言及し 識別不可能性との関連を考察するとともに、remarkable E.M (Ehrenfeucht-Mostowski) 集合の概念を導入し、そちらの観点から $ 0^{\sharp} $ について調べ、(1.a) (1.b) との関連を考察します。
(参考文献) Thomas J. Jech 著 Set Theory . ほとんどコピーになってしまいました。お許しの程を。
(少し関連あるかもリンク) Fuさんのとこの 計算不可能性の理論その2
(関連リンク)
0# (zero-sharp) 二回目
0# (zero-sharp) 三回目
0# (zero-sharp) 四回目
0# (zero-sharp) 五回目
0# (zero-sharp) 六回目
Kunenの定理 (準備編)
0# (zero-sharp) 七回目
Kunenの定理 (証明編)
コメント_Fu [おおー、 zero sharp を構成可能性についてのチューリングジャンプみたい...]
_かがみ [実はあの後関連について先生に聞いたのですが、確かに類似がないわけではないと思うが...]
なにやらおうちで使っているレンタルサーバーの アイネットディ からメールがあり、今使っている「Lightプラン」のディスクスペースが 1G がら 5G へ増量するそうな。いやはやそれにしても一気に 5倍とは大盤振る舞 いな。試しに今使っている容量を確認してみました。
なんと優良な (笑)。四分の一くらいしか使っていないではないか。5G ともな ると重要なファイルのバックアップ用途としてますます便利になりそうです。 それからそろそろおうちのサーバー管理も面倒になってきたので、現在の自宅 サーバー (FreeBSD/X24) が壊れてしまったら、ほんとこのページごとレンタ ルサーバーへ移行することもありうるかも知れません。まあそれはそれで面倒 ではあるのですが。$ du -sk 275700 .
コメント_miya [実は僕もここのLightプランに契約しています。入る前はいろいろと妄想はあったの...]
_かがみ [miyaさんこんにちは。そうですか、miyaさんもアイネットディを使っていたとは...]
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