02/25 aiueo 01/01 かがみ 01/01 ゼルプスト殿下 01/01 かがみ 01/01 ゼルプスト殿下 05/10 かがみ
本当に更新が少なくて申し訳ないのですが、本日は特異基数に関する Silver の定理の証明を紹介します. コーヘンの強制により正則基数のべきについてほとんど自由に動かすことが可能であることが知られていま した. そして Silver の定理が証明される以前は特異基数についても同様の事実が成立するのではと予想され ていたそうです. したがってこの定理は非常にセンセーショナルな結果だったそうです. 今の整理された証 明は比較的簡単です. なお共終数が可算の場合は非常に難しく PCF 理論の範疇となるようです.
(Silver の定理)
$\kappa$ を共終数が非可算である特異基数とする. さらに $\kappa$ 未満で一般連続体仮説が成立すると仮定 する. 言いかえると $\forall {\lambda \lt \kappa} (2^{\lambda} = \lambda^{+})$ が成立しているとする. このとき $2^\kappa = \kappa^{+}$ が成り立つ.
(補題 1)$\kappa$ を極限基数とする. $\kappa$ 未満でのGCHが成り立ち $\lambda,\mu \lt \kappa$ のとき $\lambda^{\mu}\lt\kappa$
(証明)$\lambda^{\mu} \le (2^\lambda)^{\mu} = 2^{\max(\lambda, \mu)} = \max(2^\lambda, 2^\mu) = \max(\lambda^{+}, \mu^+) \lt \kappa.$ □
(定義)正則基数 $\lambda$ 上の関数 $f, g$ に対し $\alpha\lt\lambda$ が存在し $\alpha \le \beta \lt\lambda$ に対し $f(\beta) \neq g(\beta)$ を満たすとき $f, g$ は「ほとんど異なる」と言う.
(補題 2)$\lambda = \mathrm{cf}(\kappa)$ とする. そして $\langle \kappa_\alpha : \alpha \lt \lambda \rangle$ を $\kappa$ の連続 (極限に関して閉じている) な共終列とする. すなわち $\lim_{\alpha \to \lambda}{\kappa_\alpha} = \kappa$ が成りたつものとする. $\langle A_\alpha : \alpha \lt \lambda \rangle$ を $\alpha\lt\lambda$ に対して $|A_\alpha| \le \kappa_\alpha$ を満たす列とする. $F$ を(2.1), (2.2)の条件を満たす集合とする. \begin{gather} \displaystyle{F \subset \prod_{\alpha \lt \lambda}{A_\alpha}} \quad (2.1) \\ F\, の異なる二つの要素は互いにほとんど異なる. \quad (2.2) \end{gather}このとき $|F| \le \kappa$
(証明)$S_0$ を $\lambda$ 未満の極限順序数全体からなる $\lambda$ の定常集合とする. $\alpha\lt\lambda$ に対して $A_\alpha \subset \kappa_\alpha$ として一般性を失なわない. $f \in F$ として $f^{\ast}(\alpha)=\min\{\beta\lt\lambda : f(\alpha)\lt\kappa_\beta\}$ とする. このとき $\alpha\lt\lambda$に対して$f^{\ast}(\alpha) \lt \alpha$ が成り立つ. フォドアの補題により $\lambda$ の 定常集合 $S \subset S_0$ が存在して $S$ 上で $f^{\ast}$ は定置となる. $f \upharpoonright S$ を $\varphi(f)$ と書くこととする (選択公理を使う). $F$ の各要素は「互いにほとんど異なる」ので $\varphi$ は $F$ からの単射である. そして $\varphi$ の値域の可能性は (2.3) の通りである. \begin{gather} 2^{\lambda} \sum_{\alpha\lt\lambda}{{\kappa_\alpha}^\lambda} \le \lambda^{+} \kappa \le \kappa \quad (2.3) \end{gather} □
以降特別に記載しない限り (補題 2) と同一の記号を使います.
(系 2.1)(補題 2) と同じ記号で $T=\{\alpha \lt \lambda : |A_\alpha| \le \kappa_\alpha \}$ が $\lambda$ の 定常集合であるとする. こととき $|F| \le \kappa$.
(補題 3)$f$ を $\lambda$ から $\kappa$ への関数で $\alpha\lt\lambda$ に対して $f(\alpha)\lt\kappa_{\alpha}^{+}$ を満すも のとする. $F$ を $\lambda$ 上の「ほとんど異なる」関数からなる集合とする. $F_f$ を (3.1) で定義すると $|F_f| \le \kappa$ が成り立つ. \begin{gather} F_f = \{g \in F : \mbox{for some stationary set } T\subset\lambda, g(\alpha) \lt f(\alpha) \mbox{ for all } \alpha \in T \} \quad (3.1) \end{gather}
(証明) 固定した定常集合$T$に対し $|\{g \in F : g(\alpha) \lt f(\alpha) \mbox{ for all } \alpha \in T \}| \le \kappa$ である. したがって $|F_f| \le {2^\lambda} \kappa \le \lambda^{+} \kappa = \kappa$. □ (補題 4)$\langle A, \preceq \rangle$ を全順序集合とする. 任意の $x \in A$ に対して $|\{y \in A : y \preceq x\}| \lt \lambda$ のとき $|A| \le \lambda$.
(証明)$\langle a_\alpha : \alpha \lt \kappa \rangle$ を $A$ の要素の増大列で $\preceq$ に関して共終なものとする. すなわ ち任意の $x \in A$ に対して $\alpha\lt\kappa$ が存在して $x \preceq a_\alpha$ が成立する. このとき共終 性により (4.1) が成り立つ. \begin{gather} A = \bigcup_{\alpha\lt\kappa} \{x \in A : x \preceq a_\alpha\} \quad (4.1) \end{gather} ここで $\lambda \lt \kappa$ であると仮定すると $\{a_\alpha : \alpha \lt \lambda\}$から$\{x \in A: x \preceq a_\lambda\}$ への単射が存在する. したがって $|\{x \in A: x \preceq a_\lambda\}| \ge \lambda$ となるがこれは仮定に反する. したがって $\kappa \le \lambda$ であり (4.1) により $|A| \le \lambda$. □
(補題 5)$\{A_\alpha : \alpha \lt \lambda \}$ が $|A_\alpha| \le \kappa_{\alpha}^{+}$ を満す列と仮定する. $F \subset \prod_{\alpha \lt \lambda} {A_\alpha}$ を相異なる要素が「ほとんど異なる」部分集合であると する. このとき $|F| \le \kappa^{+}$ である.
(証明)$U$ を $\lambda$ の非有界閉集合フィルターを拡張した超フィルターとする. $U$ の要素はすべて定常である. $f,g \in F$ に対して超積 $\prod_{\alpha \lt \lambda} {A_\alpha}/U$ での自 然な全順序 $\lt$ を考える. すなわち $f \lt g$ は (5.1) を意味する. \begin{gather} \{\alpha \lt \lambda : f(\alpha) \lt g(\alpha) \} \in U \quad (5.1) \end{gather} $f\in F$ に対し (5.2) を考える. $g\lt f$ のとき $g \in F_f$ である. \begin{gather} F_f = \{g \in F : 定常集合 T が存在して \alpha \in T のとき g(\alpha) \lt f(\alpha)\} \quad (5.2) \end{gather} (補題 3) より $|F_f| \le \kappa$ が成立する. したがって $|\{g \in F : g \lt f\}| \le \kappa$ が成立し (補題 4) より $|F|\le \kappa^{+}$ □
(Silver の定理の証明)$\alpha\lt\lambda$ に対して $A_\alpha = \mathcal{P}(\kappa_\alpha)$ とする. 仮定により $|A_\alpha| \le \kappa_{\alpha}^{+}$ が成り立つ. $X \subset \kappa$ に対して $f_X(\alpha) = X \cap \kappa_\alpha$ とする. $X \neq Y$ のとき $f_X \neq f_Y$ であり $f_X, f_Y$ は「ほとんど異なる」ので $|\mathcal{P(\kappa)}| \le \kappa^{+}$. □
(参考文献) Karel Hrbacek, Thomas Jech, Introduction to Set Theory, Third Edition, Revised and Expanded, Marcel Dekker, 1999.コメント
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